こんにちは。山口むつおの嫁のゴリラ性欲嫁です。前回、特集を書かせていただいたところ、マキゾウが合作しようや!と誘ってくれるに至ったので、コラボってみました。
ゴリラ性欲嫁が、まだおぼこ娘だった頃のお話です!

 

 

 

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今から10年前、京都に住んでいた私は、友人に相談を持ちかけられた。友人といってもパソコンスクールで同じクラスだった四十代の方(名前を仮に山田さんとする)で、内容も夫の浮気に関するものだった。夫がクラブのママと浮気しているようだ。謝礼は支払うので、尾行してどこのクラブかを突き止めて欲しい。大まかに言うと、そういう相談だった。

 

浮気の話はそれまで何度も聞いており、聞く度に「酷い話があったもんです!」と相槌を打っていたものの、山田さんが解決に向けて具体的な行動に出ることはなかったので、私は食傷気味になっていた。
そこに、この相談である。
尾行に協力することで、事が進展するきっかけになれば…と思い、面倒であったが引き受けることにした。さすがに一人では心細いので、前髪が海苔のような友人(名前を仮に海苔子とする)にも同行をお願いした。友人は無職であったため、「謝礼」という言葉に反応して二つ返事で引き受けてくれた。

 

尾行前日、山田さんが打ち合わせをしたいと私の家にやってきた。手には、夫のカードケースの中からこっそり書き写したという、夫がこれまで行ったであろうクラブの住所一覧と家族旅行の写真。楽しそうな一家の写真を見ると、ドラマでしかみたことのない尾行というものが現実味を増した。この日もオウムのように「酷い話があったもんです!」を繰り返しながら、小一時間山田さんの話を聞いてあげた。

 

そして、尾行当日。夫の勤務先近くに集合した三人(私に至っては、わざわざ会社を早退)は、駅までの道のりをチェックし、夫の退社に備えた。

 

「あの人、朝から鼻歌なんか歌って遅くなるって言ってたから、今日は絶対に店に行くと思うわ!」

と、山田さんが言う。そうなのだ、こんな風に待機(私に至っては、わざわざ会社を早退)しているからといって、夫が浮気相手のところへ向かう確実な保証はなく、すべては予想で動いていた。

 

 

 

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夫の退社時刻が迫ったので、車が見つかるとまずい山田さんは、離れたコンビニの駐車場へ。私と海苔子が会社の出口付近で張り込み体制をとった。

 

かくして、夫はいともあっさりと出て来た。しかし、想定外なことに向こうは自転車に乗っていた。一瞬で夫を見失った私達は肩を落として山田さんの待つコンビニへと向かった。夫が会社から駅まで自転車に乗っていることを山田さんは知らなかった。冷えきった夫婦関係がもたらした弊害である…。

 

時刻は19時を回ったくらい。そんなに早い時間からクラブへ行くことはないので、きっとこの辺で食事するなどして時間をつぶすに違いない。最寄り駅のホームで張り込もう!コンビニの駐車場で話し合ってそう決まり、山田さんは帰宅した。山田さんと別れた私達は、とりあえず終点までの切符を買って改札を通った。

 

金曜日のホームは人でごった返している。私は人の顔を覚えられないたちなので、さっき一度見ただけのスーツ姿のおじさんを憶えている自信がなかった。どの人も本人に見える。

 

「あれは?」「あれはどうかね?」「おった~!」

 

私が言う度、海苔子が「ぜんぜん違うやん!」と否定する。何人もの人を注意深く見続けることは思いのほか疲れる上、会話をする余裕もない。二時間ほどそうしていただろうか。

 

 

「来た!」

 

 

海苔子がつぶやいて立ち上がった。二人組のサラリーマンがこちらに向かって来ていた。私にはそれが、数時間前に見た人物なのかさっぱり分からなかったが、歩き始めた海苔子の後を追う。追いながら、おじさんの後ろ姿を携帯のカメラで撮影し、山田さんに送った。山田さんからの返信には「旦那です!」と書いてあった。

 

おじさん二人組と同じ車両に乗る。四条駅についたところで、おじさんは同僚に挨拶をして下車した。人の多さに何度も見失いそうになりながら、必死で真後ろを追いかける。

 

おじさんが細い路地に入って、ようやく周りの人も減り、なんだか街の雰囲気がさっきまでと違うなぁと思ったら、そこは祇園だった。

 

おじさんは何軒もクラブが入っているビルのエレベーターに乗った。同乗すべきか迷ったものの、足が立ちすくんで無理だった。エレベータの扉が閉まり、階を示す数字のランプが移動していく。ランプが何階で止まるのか確認しようとしたが、いくつかの階で停止したので、おじさんが何階で降りたのかは分からなかった。

 

しょうがなくビルに入っているクラブの看板を全てカメラで撮影した後、ビルと対面する形で路地にしゃがみ込みんでおじさんが出てくるのを待った。電柱の脇に座っているだけなのだが、そこは祇園。そんな人間は一人もいない。

 

大人の夜の街に、カジュアルな服装の女二人は浮き過ぎていた。人生でこんなに見られたことはないというくらい、道行く人(全部おじさんとホステスのカップル)に不審な目で見られた。

 

近くの店のホステス達が、お客の見送りに出てくる度にこちらを見て、店に戻りながらなにかひそひそ話している。これ以上その場にいるのは辛かった。おじさんがビルに消えてまだ30分、ママと一緒に出てくるとしたら閉店までいるはずだ。私達はしばらく祇園から離れることにして、歌広場に行った。

 

歌広場では、歌うことなくこれからどうするかを相談した。また祇園へ戻らなければならないと思うと憂鬱な気持ちになり、海苔子と私は「飲まなきゃやってられないよ!」と言い合ってビールを飲んだ。緊張しながら飲むビールでは酔った感じがしなかった。2時間後、元の場所へ戻った。

 

時刻は22時半になっていた。クラブの看板はどれも相変わらず煌々と灯っており、いつ消えるのかも分からない。腹をくくって再び座り込む。クラブではママがお客と一緒にエレベーターを降りて見送りをするのが慣習らしく、何人ものママが降りてくる。7人くらいのママが入れ替わり立ち代わり見送りに来ては、戻り際にこちらを一瞥する。

 

一人のママを三回くらいづつ見ただろうか。このままではきりがないので、閉店時間を聞くためにいずれかのママに話しかけることにした。

 

どのママも、これまで出会ったことのない類の人でとても怖い。セットされた前髪、濃い化粧、年齢も不詳…。くよくよしてさらに30分が過ぎた頃、割烹着のママが現れた。他のママとまるで違う庶民的な風貌に海苔子と目を見合わせた。

 

この人だ!

 

急いで走り寄って話しかける。

「すみません!この辺りのお店って何時に閉まりますか?」

 

ママから返って来たのは意外な言葉だった。

「あんたら、なんでそんなこと聞くの?」

 

なにも答えられない私達に、厳しい顔でママが続ける。

 

「な・ん ・で ?」

 

 

一言づつゆっくり発音する最高に怖い凄みのテクである!なにか言わねば…。でも、おじさんが通っている店のママがこの人だったらまずいし…うまい言い訳を考えていたら、隣で海苔子が口を開いた。

 

 

 

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「う、浮気調査なんです!!!」

 

言っちゃうの~!?と思って海苔子を見ると、子羊のようになっている。

 

「それ、どういうこと?」

 

ママは追及の手を緩めない。海苔子は子羊のまま震えながら、友達の旦那さんが…と白状した。
厳しい表情ですべての告白を聞き終えたママは、急に声色を変え、菩薩のようになって言った。

 

「あんたら、ずっとそこにいたやろ?おかしい思てたらそういうことやったんか。その友達に言うとき。まだ若いんやから、こんな野暮なことせんでええ。旦那かて一時の気の迷いや。男っていうんはそういうもん、夫婦はずっと続くもん。こんなことで旦那責めたらあかん」

 

友達と言っても四十代、子供三人、長年連れ添った挙げ句の浮気で離婚寸前です!とはとても言えず、深夜の祇園路上で夫の火遊びに悩む若奥さんの友人として話を聞いた。

 

「うちもな、ここで店を始めたんは五年前や。それまではな…」

 

ママの話は、中年になってから祇園で店を開いた時の苦労話にシフトしていた…。

 

 

–10分経過。

 

 

「…やからな、あんたらももう帰りや。この辺りの店は閉まる時間もバラバラや。ほなね。」

 

「あ、ありがとうございました!」

 

 

立ち去るママの後ろ姿にお礼を言ってから、また電柱の脇にしゃがみ込む。しかし、ママにちょっといい話をしてもらった手前、これ以上ここにいるのはさすがに気まずい。時間は0時を回っていた。ミッドナイトに大人の街にいる恐怖。下を向いて目に入るスニーカーの足下も情けなく、遠くからは騒がしい酔っぱらいの声が近づいてくる。もう帰りたい…そう思った時だった。海苔子が酔っぱらいに向かって叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「Tかじんや!!」

 

 

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そこには、テレビで毎日のように見ていた、やしきTかじんがいた。

Tかじんに駆け寄って手を振る海苔子。急激にテンションが上がり、私も思わず手を振る。そんな私達にTかじんは言った。

 

 

 

「おーい、田舎モン、お前らも来い!」

 

 

 

なぜかTかじん御一行(Tかじん、芸妓、浅黒い中年)に加わることになった私達は、そのまま芸妓の働くバーに連れて行かれた。店に入った瞬間、客は全員Tかじんに釘付けになった後、私達を見て怪訝な顔をした。

 

浅黒い中年が周りの客に説明をする。

「この子ら?Tかじんのファンや!」

 

Tかじんが浅黒い中年を指差して言う。

「そして、これは俺の主治医!」

 

浅黒い肌に真っ白なポロシャツの主治医は、当時流行していた「ちょいワル」どころの騒ぎじゃない相当なワルに見えた。ついでに芸妓は私・海苔子と同い年だった。

 

私と海苔子がTかじんの両脇に座るように言われ、宴は始まった。しょっぱなから赤ワインのボトルが登場し、矢継ぎ早に注がれる。極度の緊張で美味しいのか全く分からない。Tかじんは私達に年齢を聞き、歳の割に野暮ったいことを知ると、

 

「女はなぁ、今はこんなんやけど、あと三年もしたら変わってしまうんや。こういうタイプに限って、ころっと都会の女になってしまうんや!」

 

と言っていた。その時は、私がそんなに変わるかなぁ…?と、Tかじんの言っていることがまるで分からなかったが、今は野暮ったさはそのままなれど10年前の自分を他人のように感じたりはするようになった。

 

 

隣では、誰かの誕生会が始まった。店の客全員にシャンパンが振る舞われ、酔っ払った客がTかじんに言った。

 

「Tかじん、東京や!東京歌えや!」

(※「東京」とは、歌手であるTかじんのヒット曲である。

誕生日プレゼントとして歌えという意味だろう。Tかじんは聞こえないふりをしている。

 

「Tかじん、東京や!」

 

客は何度も繰り返す。芸妓が客をなだめても東京コールは止まらない。業を煮やした主治医が立ち上がった。客は「やんのか!」と挑発する。主治医はなぜかシャドウボクシングで応戦。Vシネマで見たことあるやつだ!ヒヤヒヤしながら見ていると、超然としていたTかじんがすっと立ち上がり、

 

「やめとき。」

 

客には目もくれず主治医に言った。それだけで場は収まった。

 

 

その後は、Tかじんが芸妓の恥ずかしい話(酔い過ぎて上半身丸出しではしゃいだそうです)を暴露。芸妓が「Tかじんさん、いややわ、そんな恥ずかしい話思い出して」とはんなり返しているのを見て、同い年の目の前の女性の人生についてしみじみ考えたりしつつ穏やかに時が過ぎていった。

 

 

二時間近く経過した頃。Tかじんが急に

「ピザや!ピザが食いたいわ!」

と言い出した。

 

お前らに、日本でいちっばん旨いピザを食わしたる!

 

相当酔っているTかじんは高らかに宣言し、席を立った。慌てて追いかけると、次の店に行くのは、私と海苔子だけのようだった。店を出るTかじんに、東京をせがんだ客がペコペコ謝る姿が見えた。

 

芸妓が見送る中、Tかじんと海苔子と私の不思議な三人組はタクシーの後部座席に乗った。Tかじんはタクシーの運転手にも気さくに話しかけ、自分と同い年だと分かると労いの言葉と共に、自分の若い頃の苦労話をしてくれた。若い頃のTかじんは祇園で流しをやっていたそうだ。だから、大阪にも飲む場所はいっぱいあるのに、自身のルーツである京都まで飲みに来てるのかなぁと思った。

 

しばらくして到着したのは繁華街を外れた小さなビルだった。Tかじんに促され、地下に降りる狭いエレベーターに乗る。ピザが出て来るような雰囲気は皆無。どこに連れて行かれるのか分からない恐怖で体がこわばる。さらにご機嫌なTかじんは、

 

 

挨拶代わりにキッスをせい!と言った。

 

 

キスですと!?私が驚いている目の前で、本日二度目の子羊状態になった海苔子がTかじんにキスをした。

ここで断れる人間はいるんだろうか。断った瞬間、このご機嫌さんに殴られるんじゃなかろうか。 恐怖とおぼこ娘の貞操観念(好きな人以外とキスできない…)がせめぎあい、結論としてTかじんの頬へキスをしたが、すかさず「口や!」の一言が飛んできたので、私も子羊になってTかじんにキスをした。

 

 

そうして到着した地下の店は、小さくて小太りなゲイのママが経営するスナックだった。そのママと、ママに体系がそっくりな若いボーイの二人でやっている何とも奇妙な店だった。

 

客のひとりに“えっ!今どきそんな眼鏡!?”と思わせる、アラレちゃんそっくりの女性がいて「いいな~私もTかじんと飲みたいな~」とこちらのテーブルに向かって言い、ママにたしなめられていた。80年代がそのまま残っているような店だった。
(この文章は当時のmixi日記をベースに書いているのですが、10年前はあり得なかったアラレちゃん眼鏡や80年代が現在、またブームになっているなんて、まったく流行とは繰り返されるもんですなぁ…)

 

Tかじんはボーイにピザと赤ワインを頼み、アレをやってくれと頼んだ。アレとは?何のことか分からない顔の私に、Tかじんは少年のように言った。

 

 

「めっちゃおもろいねんで」

 

 

そうして始まったアレとは、ボーイの物まねメドレーだった。

しかし80年代の空間なので、誰の物真似なのかまるで分からない。唯一、小林旭のみ理解できたが、それも鶴太郎の物まねで見たことがあったからで、似ているのかはサッパリである。

周りは「ヒィ~~!そっくり~!」と涙を流して笑っていた。

そんな中、Tかじんが日本一美味しいというピザが運ばれてきた。すでにお腹はパンパンで何も食べられる状態ではなかったが、熱いうちに食べないと価値がないと力説するTかじんの手前、頑張って食べる。少年が喜びそうな懐かしい味だった。

 

ボーイの物まねメドレーが終わり、鳴り止まぬ拍手の音でTかじんのスイッチが入った。ママを呼び、なにか耳打ちしている。ママがうなずき、ボーイがマイクを持ってきた瞬間、Tかじん往年のヒット曲「なめとんか」のイントロが響いた。Tかじんが歌い始める。めっちゃええ声で…。
曲が盛り上がってくると私の肩を抱き、耳元でサビを熱唱した。

 

 

「うちはあんたの~おもちゃやないよ~♫」

 

 

何の思い入れもない歌詞なのに泣きそうになるほどの力があった。

 

 

 

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歌い終わったTかじんは、酔いつぶれて、私の膝枕で寝てしまった。Tかじんのポケットから、折り畳んだ一万円札がソファの上にポロッと落ちていた。
そして、動くこともできず、石のように固まって一万円札を見つめている私の前で、とんでもないことが起こった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海苔子が不注意で、Tかじんの膝に赤ワインをぶちまけたのである。

 

 

 

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最初は、海苔子の方がTかじんとの会話が弾んでいたように思う。Tかじんの一言一言に上手く反応し、笑い、場を盛り上げていた。
私はと言えば、緊張のあまり目は泳ぎ、愛想笑いで会話にならない返事ばかりしていた。

 

おかしいな?とちょっと思ったのは、二軒目に来てからだった。海苔子の話している内容がずれてきて、友達に話すかのような口調でTかじんに絡んでいる。今思えば完全に飲み過ぎだった。非現実的な空間で普段より飲み過ぎてもぎりぎり保たれていた緊張の糸が、ワインと共にぷっつり切れた。

 

Tかじんのチノパンが真っ赤に染まっている。あまりの事態に、その場にいた全員がただ固まって事態を凝視するしかなかった。そんな静寂の中、海苔子の声が響いた。

 

 

「あたしは悪くないもん!!」

 

 

その言葉を皮切りに、ママがおしぼりをいくつも持ってすっ飛んできた。

しかし、店の一番奥のソファに座った私達の前には横に長いテーブルがあり、ママが直接Tかじんを拭く事は不可能だった。ママから渡されたおしぼりで、私がTかじんを拭く。半泣きである。横では海苔子が泥酔状態で、悪くないもん…を繰り返している。

 

 

ここに、完全な悪夢が完成した。

 

 

 

だってな、ワインな、勝手にな…、訳の分からないことを言い続ける海苔子は、泥酔した頭でなんとか言い訳をしたいのだろうが、話せば話すほど墓穴を掘っていった。10分ほど経過したところでママが最終宣告をした。

 

 

「自分ら、帰り。」

 

 

ママに引きずられて店を出る海苔子。私も後を追って店を出た。
私が横を通る時、アラレちゃん眼鏡の女がニヤニヤして「覆水盆に反らず、やな」と言った。

 

Tかじんは一切怒らなかった。とてもそのまま帰れる状態ではないのに。洗っても落ちない汚れだったし、弁償はおろか海苔子は一言も謝らなかった。なのに、仕方ないやろ、といった風にじっと座って何も言わなかった。

エレベーターに乗って地上に出ると、夜はすっかり明けていた。早朝の道路の上で、私が暴れる海苔子の腕を掴んだ状態で、ママのお説教が始まった。

 

「あんな、終わったことは仕方ない。そやけどな、あんたは一言も謝らんかったやろ?それは、女としてかわいくない。」

 

言い含めるように一言一言話してくれるママの言葉も海苔子には届かない。悪くない、悪くない…と呪いのようにただつぶやくだけ…。私は海苔子を押さえつけて「本当に申し訳ありませんでした。」とママに頭を下げた。

 

 

 

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この後、海苔子は帰宅時のタクシーの中で暴れ、走行中に本気でドアを開けようとしたため途中下車。号泣しながら町をさまよい歩いた。民家の軒先に座り込んで、わけのわからない電話を方々にかけはじめたので携帯を取り上げると、今度は私のことを罵りながら歩いた。そして、その日の出来事を一軒目の記憶のみ残して全て忘れた。

 

 

私は海苔子を家の近くまで送った後、朝までの出来事を思い出して泣きながら歩いて帰った。

 

 

 

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この後、山田さんは離婚して友人と会計事務所を立ち上げたそうだ。

 

 

 

 

テキスト:ゴリラ性欲嫁
イラスト:マキゾウ